国家資本主義vs欧米型資本主義

toyokeizai.net

cigs.canon

www.rieti.go.jp

moneyworld.jp

https://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H28_US-China/06_ohashi.pdf

第 1 に、中国企業、とりわけ国有企業が追求しているのは商業的利益なのか、それとも 国家目標の実現なのか。中国の国有企業は純粋な市場アクターとして利益の最大化を目指 しているのか。むしろ国家目標を優先しているのではないか。実際に国有企業は国家レベ ルから地方レベルにいたるまで、各級の国有資産監督管理委員会の管理下にあり、その最 高経営責任者(CEO)は共産党織部が任命し、共産党員からリクルートされている。 2015 年 12 月、中国航空工業集団公司(AVIC)の子会社が合弁事項不履行のために 7000 万ドルの支払い命令を受けた時、同社は外国主権免責(sovereign immunity)、すなわち、 国際民事訴訟で被告が国または下部の行政組織の場合に、外国の裁判権から免除される原 則を主張して議論を呼んだ(Reuters, May 11, 2016)。国有企業がすべて中国政府の意向に 基づいて活動しているとは考えられないが、少なくとも政府の主管部門の「指導」を受け、 また上述したような権利を主張することから、やはり国有企業は普通の民間企業とは行動 も意識も相当異なるといわざるをえない。 第 2 に、中国の国有企業や政府の支援を受けた企業と、同じ「土俵」で競争することは 可能なのか。米国資産の取得競争でも、中国の国有企業は「不公平」な競争優位を有する。 国有企業は低投入コスト、低金利融資・補助金、「寛大」な規制などを享受しており、国有 企業であることは財務指標以上に優れた信用リスクの軽減手段となっている。 これに関しては、2010 年に鞍山鋼鉄と Steel Development Corp との合弁事業の撤回事例 がある(Tang 2010)。この事業計画が発表されると、米国では超党派の鉄鋼関連議員団が 結成され、地元企業とともに、①鞍山鉄鋼は国有企業である、②優遇融資の支援を受けて いる、③現地の雇用に悪影響を及ぼす、④米国の基幹産業へのアクセス機会を得るとして、 活発な反対運動が展開され、鞍山鋼鉄は事業計画の撤回を余儀なくされた。 第 3 に、国有企業とは本来非効率な存在であり、その増勢は米国経済に悪影響を及ぼさ ないか。そもそも国有企業は透明性やディスクロージャーの水準が低く、企業統治は確立 されておらず、腐敗も蔓延している。また中国企業による先進技術の取得、中国への取得 資産の「持ち帰り」は、安全保障上の懸念にとどまらず、経済的にも「ブーメラン効果」 第6章 「国家資本主義」をめぐる米中経済関係 -84- の遠因となり、中長期的に米国企業の脅威となる可能性がある。 このように古くて新しい批判が、米国政府・議会や経済界で勢いを増している。中国の WTO 加盟後、米中経済摩擦の具体的な係争案件は WTO のパネルで粛々と解決されてきた。 しかしその背景には、政治経済的に相容れることが難しい「非市場経済国」=中国の「国 家資本主義」的性格が存在する。

www.nri.com専制主義(autocracy)」と「民主主義(democracy)」との対立