ニー特区

『ニー特区』
「お客様、着きました。お代は政府持ちなので大丈夫ですよ」
「・・・ありがとうございます」久しぶりに見る太陽に目を細めてタクシーから降りた。目の前にはどこまでも続く壁と門があった。
「えぬさんですか?」にこやかな笑顔で声をかけられた。
「・・・はい」
「案内役兼カウンセラーのえすといいます。ご案内しますのでついて来て下さいね」そう言うと門に向かい守衛さんに話し掛けて何か書き込むとバッチを貰いさしだしてきた。
「・・・ここは?」
「親御さんから聞いて無いですか?ニートの方の為のニート解放区、通称『ニー特区』ですよ。政府直営なので安心して下さい」騙されたのかな、親にはカウンセリング受けて見たらと言われただけなのに。
「着きました。ここがあなたの部屋になります。バッチが鍵になってます」バッチをドアへ近づけて開くと中は六畳位の部屋に机とパソコンが置いてあった。
「・・・ここで何すればいいんですか?」
「何もしなくて良いです。ネットは自由に使えます。マンガは図書館で借りれます。食事はルームサービスか食堂で」
「それだけですか?」
「1日一回カウンセリングに来て下さいね」
ドアに鍵をかけると部屋に倒れ込んだ。人と話すなんて何ヶ月ぶりだろう。もう動きたくない。
しばらく横になってする事も無いのでパソコンを立ち上げてネットに繋いで暇つぶしをした。
それから何日か経った。カウンセリングのため部屋の外へ出ようとしたが「駄目だ」廊下の向こうで人影を見るだけで鼓動が早くなり口が乾く
「すみません、カウンセリングはオンラインでいいですか?」教えてもらっていたリンクをクリックしてカウンセラーに相談すると「いいですよ」と返事があった。
部屋の中で一日中過ごす日が続いた。
ある時パソコンの画面のLゲームというアイコンに気づきクリックしてみた。
「いらっしゃいませ。まず好きなアバターを選択して下さい。ヘッドセットをつけて調整してみて下さいね」
バーチャルリアリティゲームを立ち上げたらしい。キャラメークをして案内に従いチュートリアルをこなした。
お約束通りギルドへ行ってみる。クエストを見ると自分でも出来そうだ。
「ここをこうやって・・・出来た!」
エストを提出するとファンファーレが鳴って報酬と経験値が上がる。面白くなってクエストをクリアするのに熱中しだした。
・・・
「計画は上手く行っているようだね」
「はい、皆さんクエストが現実社会の受注した仕事とは思ってないようですね」
「難易度はAIで本人のレベルに合わせてあるしゲーミフィケーション技術が使ってあるからな」
ニート解放区の管理官達はモニターを見ながら満足そうに笑った。